1979.4月 New Orleansにて
この街は、他の街とは違う空気に被われている。
特にフレンチクウォーターは、観光地とはいえ独特だ。
フランス移民が創った街並みは、古くて若々しい。
ゴハンも美味しい。もちろんジャンバラヤは食べないが、
カメのスープ、鯰の唐揚げ etc. そして夜にはJazzの街へと変わる。
カントリーの店もあれば、Dexy Land,そして、
もちろん若いのから、老いたのまで、戦うように競うJazz。
明け方まで続く音のお祭り。
お金など無くても外の通りから、ずっと聴いていられる天国だ。
この街は、私の憧れだった。
ウディ.ガスリーの息子、アーロ.ガスリーが歌った
「City of New Orleans」貨物列車に乗り、
Hoboと呼ばれる日本人を含む移民達が旅の果てに見た大都会だ。
君はニッティーグリッティー ダート バンドを知っているだろうか?
曲に合わせて踊り出す「ミスターボージャングル」の世界だ。
それはお伽話の世界だと思っていたら……。
そいつは曲の途中で、ひざから滑り込んできた。
上下、青色のスーツ、真っ赤な蝶ネクタイ、小さな黒人の芸人が、
バックステージを我が物顔で踊りだした。華麗なステップ。
絶対に外さないOne-man-stage
客は皆んな、大盛り上がりで拍手喝采。
曲が終わると、どっさりと皆んなから金を集めて
どこかへ消えていった。
歌の世界が、本当に起こった事を、
私も何も言えず心が天まで登った。
けれど……その20分後、大きくて太った黒人女が、
彼の集めた金を、全部巻き上げているのを、路地裏で偶然見てしまった。
「まぁ、いいか」
踊れ、踊れ、高く飛べ、皆んな、笑え、
そして私の目には泪。
そんな街だよ
City of New Orleans.
明日はどこへ行こう。